ギャラリーカフェ900
韓国では近年、カフェ業界の競争が激化し、激安コーヒーや大容量コーヒーのチェーン店が続々と登場しています。なかでも衝撃だったのが、今年頭に誕生たばかりなのに、既に当店の500m圏内にも3店舗存在するコーヒーチェーン店、「ギャラリーカフェ900」。

なんとアメリカーノ(薄いブラックコーヒー)を、たった900ウォン(約90円)で販売しております! しかも店内はコンセント・Wi-Fi完備。当然長居してパソコン作業する人も多く、さらには中高年の団体客がアメリカーノを1杯だけ購入、コップだけ人数分もらい分け合って飲む景色も。恐ろしや……。

「最上の仕立て豆」とは何やらぼんやりしていますが、この価格でお店が回るなんて驚きです。とはいえさすがに900ウォンは厳しいのか、カードでの会計時には1000ウォンとしたり、ホットもアイスも可だったのがホットだけになったり(写真の黒塗りはその名残り)、経営陣もあれこれ試行錯誤しているようです。
そんななか、数日前に予想外の大技が出ました!

ホットのアメリカーノは1900ウォン、アイスは2900ウォンと、創業半年も経たず倍以上の値上げです! もはや店名の「900」、全然関係ありません! てゆうかそもそも「ギャラリー」って何なのでしょうか? 型破りなギャラリーカフェ900の動向に、これからも注目していきたいと思います。
ご来店
基本的にお客様の個人名を書くのは控えているつもりですが、今回は都市伝説レベルの話だと思って許してください。
ある日ツイッターでエゴサしていたら、ある男性のツイートが目を引きました。
「やべえ 雨乃日に俳優のキム・ヘスクさんがいらっしゃる」
誰だっけと思って検索したら、
この画像が出てきて、マジかと度胆を抜かれました! そうです、韓国ドラマを2~3本だけでも観たことある人なら、必ず目撃しているに違いない名脇役、キム・ヘスク先生です!! 出演ドラマ数82本、そしてそのほとんどがオモニ(お母さん)役!!! 正直、名前を聞いただけでは誰だかわかりませんが、顔を見たら秒速で「ああいつものオモニね」と思わざるを得ないキム・ヘスク先生、町ですれ違っても絶対に判別できると思っていたのですが、まさか当店に来ていたとは!!!! しかし何の記憶も残っていません!!!!! あまりに想定外だったとはいえ、どれだけ典型的なオモニぽかったんでしょうか?
男性のツイートは、さらに次のように続きます。
「いや、やばいなんてもんじゃない キム・ヘスクさんの横にいらっしゃったのはパク・チャヌク監督じゃん!!!!!!!」
ちょっと! パク・チャヌク監督と言えば『お嬢さん』『親切なクムジャさん』『オールドボーイ』『復習者に憐れみを』と大活動中の巨匠ではないですか!! 怪作『サイボーグだけど大丈夫』含めて全部観てるっつーの!!! 我ながら本人がいらっしゃったら絶対気づくと思うのですが、何で気が付かなかったのでしょうか? 同様に、何の記憶も残っていません!!!!
この男性はキム・ヘスク先生にはサインをもらったと書いていらっしゃるので、たぶん間違いではないと思うのですが、自分にとってはにわかに信じがたいような、でもちょっと自慢したいような話でした。こんどキム・ヘスク先生が来られたら、Tシャツにサインしてもらおう。
映画『バムソム海賊団 ソウル火の海』
韓国国民の目の前に「金正日マンセー」が大写しに(※あの方とは同姓同名の別人のことを歌った曲だそうです)先週開催された全州国際映画祭にて、韓国インディー音楽ファンも北朝鮮マニアも起立拍手間違いない最高な映画『バムソム海賊団 ソウル火の海(Bamseom Pirates Seoul Inferno)』を観てきましたので、早速ご紹介したいと思います。
ドラムのクォン・ヨンマンとベースのチャン・ソンゴンによる2人組バンド「バムソム海賊団」の活動を、2011年(映画『パーティー51』におけるトゥリバン闘争以降)から撮影したドキュメンタリー。大韓民国から北朝鮮、金持ちから貧乏人、社会問題から自分自身まで、あらゆるものをおちょくる天才的な歌詞と、突き抜けるほどパンクかつ時々へなちょこなライブパフォーマンス(民営化と称して観客に演奏させ、本人は見てるだけというシーンも……)が素晴らしい、彼らの魅力を前面に押し出した作品です。既にバンドはあっさり解散しているため、バムソム海賊団を体験できる貴重な資料ともなっています。
監督は、韓国を揺るがした猟奇事件・至尊派事件(1993年)を中心に、聖水大橋や三豊百貨店の崩壊事故などの映像をコラージュし、90年代とそれに続く現代の韓国を浮き彫りにした映画『ノンフィクションダイアリー』で評価されるチョン・ユンソク。今回の作品でも、彼らがネタにする歴史的映像をふんだんにコラージュしたり、歌詞のテロップを(しかもしょぼいフォントで)挿入したりと、爆音のライブだけでは分かりにくいバムソム海賊団の世界を、監督ならではのアプローチで翻訳しようと試みます。強制撤去が迫る明洞のビルや立て籠もり中の大学構内など、デモの現場で演奏することの多かった彼らですが、この映画では運動家的な側面よりアーティストとしての存在感が際立っています。
MCだけで実際のライブ映像をあえて使用しない展開も多く、そこはライブ観たいところなのに……とやきもきもするのですが、ライブ体験だけで彼らを理解したような気持ちになるのはまだ早いという、監督のメッセージがその表現にあるように思います。
物語が進むにつれて、世間はバムソム海賊団をカテゴライズしようとします。左派なのか右派なのか? 音楽なのかパフォーマンスなのか? それは説明できない異物を排除しようとする韓国社会の姿とも言えます。一方、歌詞を担当するヨンマンは、カテゴライズされることをのらりくらりと拒否します。彼の機転の利いた発言の数々は、観ていて爽快なほどです。
やがて物語は、彼らのレーベルオーナーである写真家パク・チョングンが、北朝鮮オフィシャルツイッターをネタでRTしまくったところ、国家保安法違反で拘束されてしまう事件(2012年)で急展開を迎えます。参考人としてヨンマンも出廷することになり、「北朝鮮を崇拝しているのか」「キムジョンイル万歳という歌は何なのか」と説明(カテゴライズ)を求められます。それらのやりとりがバカらしくもあり、いちいち最高です。
バムソム海賊団という「面白い」の一言では語りつくせない男たちのパンク道中を、純粋に面白がりながら、表現することについて考えさせてくれる作品。これはぜひ日本でも(できれば爆音で)上映してほしい! 関係者の皆様よろしくお願いします。
※作品理解に監督へのインタビュー記事がだいぶ参考になりました。
応援メッセージ
ここ最近、週に一度は、訪れたお客様が当店へのメモをしれっと置いていかれます。内容は「おいしかった」など私たちを応援してくれる嬉しいものばかりですが、なかでも先日頂いたメモはとてつもなくインパクトがありました。
見知らぬ女性のお客様が、ちらちらこちらを見ていらっしゃるなと思ったら、去った後のテーブルには案の定B5サイズの紙が。開いてみると、「ごちそうさまでした」というメッセージとともに、驚異的なほど精密に描かれた私の似顔絵がありました。似ていることはもちろん、私のつむじから新しく生えてきた数本の髪の毛まで描写されています。いや、そこまで観察していただかなくても……。
そして何よりぎょっとするのが、なぜか般若のようなしかめっ面をしているということです。いや確かに見知らぬ方には愛想悪いかもしれませんが……これはがくーんときます。一緒に描かれた妻の絵はアニメのヒロインのようでした。
日本語同人誌『中くらいの友だち』が当店でも購入できます

ジャーナリストの伊東順子さんを中心に、韓国と関わりつづける個性的な執筆陣がつづった同人雑誌『中くらいの友だち』。韓国では雨乃日珈琲店でも購入できるようになりました。
在韓ミュージシャン・佐藤行衛さんの大韓ロック話を始め、ツイッターでも人気のゆうき先生による韓国体験談、料理研究家きむ・すひゃんさんによるディープな韓国食、パク・ミンギュ『カステラ』で日本翻訳大賞を獲得した斎藤真理子さんによる韓国文学翻訳作とエッセイ、他サムルノリや水色洞散策、謎すぎるテコンドー師範の一代記(!)まで、メディアにはもちろんネットでも読めなかった興味深い話題が満載です。ちなみに私は韓国タワー話で、妻は扉題字で参加しています。
中くらいの友だち―韓くに手帖
https://www.facebook.com/chukurai/なお日本では、東京なら西荻窪「旅の本屋のまど」、池袋「ポポタム」、神保町「チェッコリ」、荻窪「タイトル」ほか、名古屋なら「ちくさ正文館」、京都なら「誠光社」、福岡なら「リードカフェ」などでも取り扱うほか、お近くの書店でお取り寄せいただくことも可能です。追加情報は上記フェイスブックをご覧ください。
韓国旅行の復習に、ぜひ読んでほしい一冊です。仁川空港へ向かう前に、弘大6番出口近くの当店に立ち寄り、しゅっとご購入されるのがお勧めです。
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