当店ではライブをしてくれたアーティストを中心に、日韓ミュージシャンのCDをいくつか販売しているのですが、そのうち韓国インディーミュージシャン音源の、6月現在のラインナップを紹介したいと思います。
■.59(チョムオグ)『愛のおさまる場所』 90年代から活動し、フジロックにも出場経験のあるロックバンドCocore(ココア)のベーシスト、キム・ジェグォンと妻ムン・ジエによるエレクトロポップユニット。ダンサブルながら、韓国歌謡曲のエッセンスも詰まった、情緒あふれる大人のダンスミュージックを聞かせてくれる。彼は弘大前で「
vinyl 」という名のDIY精神あふれるカクテルバーを経営しており、個性的な音楽イベントも開催する。
Helicopter Records 2015
■『パーティ51 オリジナルサウンドトラック』 映画『パーティ51』に出演したハ・ホンジン、フェギドン・タンピョンソン、バムソム海賊団、ヤマガタトゥィークスターの楽曲、全23曲を収録(お得!)。タンピョンソンはアルバム『百年』『動物』以前の、意外とポップめな楽曲が収録されており興味深い。映画の予習・復習に。
自立音楽生産組合 2015
■POPE X POPE(ポープエックスポープ)『The Divinity And The Flames Of Furious Desires』 ノイズとクラシックの間を行く、悪夢を思わせる壮大な作品。2008年から活動する4人組異端バンド「The Hitchhiker」の主要メンバー2名によるプロジェクト。
Satan Record 2015
最近入荷したものは以上ですが他にも、
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アナキンプロジェクト『学べず貧乏』 2013
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WEDANCE『PRODUCE UNFIXED VOL.1』 2013
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BIG BABY DRIVER『A Story of a Boring Monkey and a Baby Girl』 2014
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dringe augh『drooled slobbered』 2013
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イ・ラン『ヨンヨンスン』 2012(当店制作日本語翻訳歌詞を提供)
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404『1』 2012(当店制作日本語翻訳歌詞を提供)
などがあります。ご利用ください。
VIDEO Yamagata Tweakster、バムソム海賊団、ハ・ホンジン、タンピョンソン、パク・ダハムといった韓国アンダーグラウンドミュージシャンたちの、2010年から2013年頃までの破天荒な活動を記録したドキュメンタリー映画「PARTY 51」。2015年10月に日本各地での上映+ライブツアーを予定しているそうですが、それに先立ち6月20日、21日にプレミア上映会が東京・京都にて開催されます(
詳細&予約はこちら )。韓国の若き表現者たちの底力を見せつけてくれる傑作、お見逃しなく。なお日本上映に際し、字幕を私が担当しました。
2009年12月、弘大駅前にあったうどん屋「トゥリバン」が、再開発により強制的に撤去されることに。抗議の立てこもりを始めた店主のもとにミュージシャンが集まり、この問題を広く知らしめるため現場でライブを繰り広げるというのが、映画の主軸のひとつです。自分は2006年から弘大を拠点にしており、2009年といえば雨乃日珈琲店を始めようと不動産を探していた時期。彼らが主催するトゥリバンでの音楽フェス「51+」にも遊びに行ったし、ダハム君たちが当店によく来てくれるようになったのはトゥリバン問題が落ち着くちょっと前のことで、この映画を観ると個人的にいろいろリンクするところがあり、感慨深いものがあります(当時のミュージシャンの動きに当店が直接関与したわけではありませんが、今回翻訳という形で協力できること、大変うれしく思っています)。そのようなこともあり、映画の内容について私が知っている補足的な情報を、本上映までに何度か紹介できたらと思います。
今回は、彼ら自立音楽生産協会が主催する音楽フェス「51+」について。メーデーの5月1日に51バンドを集めるというコンセプトで企画されたこのフェス、2010年の第1回にはトゥリバンのあった建物全体および横の空き地を使って行われ(上写真)、61バンド・観客2500人が集まる大盛況となりました。あの小さな建物に、よくこんなに人が入ったなあという印象です。最後のほうは入場管理がざっくりとしており、実際にはもっと多くの人がいたのではないかと思われます。映画にはフェスのダイジェストシーンが映るのですが、鍵盤を弾きまくる次松大助さんが一瞬ちらりと映るのが個人的にはツボです。
2011年は前年と同様にトゥリバンで行われ、トゥリバン問題解決後の2012年はクラブ対共分室、2013年は文来芸術工場で行われています。そして今年、2015年の「
第5回全国自立音楽家大会 51+ 」は来る6月28日、忠武路・乙支路の3か所会場で行われます! 詳細、ラインナップは先ほどのリンクを。数々の伝説を生んでいるフェスであることはもちろん、これからが期待されるとんがったアーティストばかりが登場、音楽好きなら見逃せません(めったにライブをしない
ソンキョル の演奏は個人的に楽しみです)。
会場となる空間も見どころ。昼は写真家パク・チョングン氏の写真館、夜はライブスペースとして機能する「
照光写真館 」(自立本部)を始め、2012年から運営する空間「
1pxOffline 」、今年5月にオープンしたばかりのライブバー「
シンドシ 」が会場となります(後者2つは私も未訪問のため楽しみです)。弘大の不動産価格が上がり、その外へとライブスペースが拡散していくエピソードが映画にも出てきますが、美術家たちにとって弘大の次の居場所と考えられていた文来洞も、期待されるあまり商業空間が増え家賃が上昇。最近は忠武路・乙支路3街・鍾路3街といった工場街に、アートスペースが少しずつやって来ているようです。そうした街と音楽のコラボを楽しめるのも、今回の51+の楽しみではないでしょうか。
東京・京都で、そしてソウルで、ぜひ「51+」を体験してみてください。
もはやどこから手をつけたらいいのかわかりませんが、2015年上半期の当店での音楽イベントを中心に、弘大周辺の様子など紹介したいと思います。
2月の「雨乃日コンサート#33」には、「
Multiple Tap 」というイベントを掲げ、世界的な活動を繰り広げる
康勝栄 さんを中心に、韓国のノイズまわりのミュージシャン3人が集まり当店でライブをしてくれました。
トップバッターは、延長コードで演奏する
パク・ダハム さん。今回を始め当店の主な音楽イベントを企画してくれているのですが、プレイヤーとしての出演は初。
2番手は、リュ・ハンギルさんの別名プロジェクトpilot Ryu。
3番手のチェ・ジュニョンさん(写真)は、按摩器をお店のガラスに張り付けるという熱いパフォーマンスを。店内を包んだ振動音がすべてなくなった瞬間、静寂という音を鮮明に感じました。
最後に、康勝栄さんが短いながら研ぎ澄まされた演奏を聞かせてくれました。
当店初のノイズイベントでしたが、予想以上に観客も集まり(また韓国ノイズ界の重要人物たちもかけつけてくれ)、暖かな雰囲気のライブとなりました。康さんの演奏の後には、アンコールを求める拍手が起こり、本編と同じくらいのボリュームの即興演奏を披露する場面も。
当日の様子を、観客の方が録画してくれたようです。ぜひご覧ください。
VIDEO 4月の「雨乃日コンサート#34」には、東京のバンド・
ホライズン山下宅配便 の黒岡まさひろさんが出演。黒岡さんはゲストミュージシャンとともに曲をつくるイベント「
新曲の部屋 」を企画する一人なのですが、
同名イベント をソウルで行っているイ・ランさんの発案により、今回の来韓が実現ました。なお当店でのライブの前日には、近所の書店ユアマインドにて、イ・ランさんと黒岡さんによる「新曲の部屋」が行われています。
雨乃日コンサートでの黒岡さんのライブは、当店のために準備してくれた既発表曲「雨の日」以外は全て、数日間のソウル滞在中に作った新曲のみを演奏。さらにその曲を録音した10曲入りのCDRアルバム「sketch」(もちろんソウルで制作)まで販売するという、とんでもなくアグレッシブなものでした。それらの曲は、荒削りなところがあるとはいえ不思議な魅力がつまっており、ライブで聞いたメロディが後日、ふとした瞬間によみがえるほど。観客の皆さんも、黒岡さんの歌を温かい雰囲気で聴き入っていました。
なお、黒岡さんの韓国滞在記(漫画)が
自身のブログ で少しずつ紹介されています。こちらも楽しみです。
対バンとして登場したのが、今年の韓国大衆音楽賞で最優秀フォークソング賞を獲得したホットなSSW、
クォン・ナム さん。演奏を聴いて涙を流すファンの方もおり、人気のほどを実感しました。
同月末の「雨乃日コンサート#35」には、
枡本航太 さんが3回目の出演。今回は、自前のひょうたんスピーカーを準備してもらったのですが、とても柔らかく深い音で、小さな空間を見事に演出していました。演奏は、静かなインスト曲から、徐々に情熱的なパフォーマンスに。それぞれのお客さんが真剣に演奏を聴き、終演後、ほぼ全員が音源を買い求めている様子が印象的でした。
その他、当店とは直接関係ありませんが、今年前半も日本から個性的なミュージシャンが多数来韓。素敵な音楽交流を実現させており、私たちも観客として印象深く参加することができました。
1月、ストレンジフルーツにて、
キム・ガンジXハ・ホンジン 、
キム・テジュン らブルースミュージシャンとの競演を果たした
三輪二郎 さんのライブ。大盛況となり、言葉がわからなくても伝わるものがあるのだなと実感。
4月、ユアマインドにて、SSW加藤りまさんのライブ。2度目の韓国ライブで、確実にファンを増やしている様子が素敵でした。
同じく4月、コプチャンチョンゴル横に新しくできた空間・コスモスにて、
SOI48 のDJプレイ。タイを中心とした東南アジアや中東の古い音楽は、韓国の音楽好きにとっても未知の世界だったのではないでしょうか。それでも皆、好奇心旺盛にその音楽に耳を傾け、特に女の子たちがノリノリで踊りまくっていました。
弘大ではありませんが、3月、西村のThe Book Societyで行われた、アジアのアートシーンを紹介するサイト「Offshore」山本佳奈子さんによる、アジアのアートシーンをめぐるトークショーも刺激的でした。日本ではひとつの専門に集中することがよしとされが、香港ではその逆で、様々なジャンルで活躍することがよしとされる、といった話になるほどと思うところがあり。トークショーの内容は
こちら にアップされています。
最近は、韓国アンダーグラウンドシーンとアジア各国の音楽交流が、以前より盛んになっている印象を受けます。ミュージシャンだけでなく耳の早いリスナーたちも、未知の音楽へのアンテナを広げているようです。