2016年8月21日

     最近は自分の店のライブレポートすらろくに書いていないのですが(出演してくださるミュージシャンたちのおかげで、毎回、忘れられない素敵な瞬間をたくさんいただいております)、先日観客として訪れたイベントがとても良かったので、弘大のスケッチとしてここに記したいと思います。当店のイベントではないからこそ、客観的に書けるのではと思う部分もあったりします。

     8月21日に弘大ベローチェにて行われた、青葉市子(日本)とSKIP SKIP BEN BEN(台湾)のライブに行ってきました。韓国からの対バンとして、私が訪れなかった前日にはWE DANCE、そしてこの日にはイ・ランが登場し、日台韓のとんがった女性アーティストが共演する形となりました。両日とも満席近い観客が訪れたそうで、今回のソウルでのイベントを企画したBARAMとHERICOPTER RECORDSの企画力に拍手を送りたい気持ちです。アジアの音楽シーンの交流がますます進むことを望みます。

     会場を温かく包み込むSKIP SKIP BEN BENの演奏も、氷のように鋭い青葉市子の演奏も(特に青葉市子に対するオーディエンスの拍手はかなり熱かった)、それぞれの才能を開花させた素晴らしいステージだったのですが、個人的にはイ・ランの演奏に圧倒されました。何度も彼女のライブを観てきたけれど、今回ほど心に刺さったのは初めてで。

     セカンドアルバム発表後、最初のライブ。『世界中の人々が私を憎みはじめた』のPVでも印象的な、チェロのイ・ジヘとの二人編成でステージに登場します。これまでは、弾き語りでなければコーラスと鉄琴のユ・ヘミとの二人編成、そこにドラムやキーボードを入れた形が基本であり、今回のような編成は初めてだったはず。

     演奏前に、個人的な事情でライブを行うことが難しい、練習もほとんどしていないと、時に言葉を詰まらせながら話す彼女。張り詰めた雰囲気の中、神秘的なタイトル曲からライブが始まります。
     
    8月21日イ・ラン セットリスト(中間、順序うろ覚えですが…)

    1、神様ごっこ
    2、平凡な人
    3、家族を探して
    4、患難の世代(コンピアルバム『新曲の部屋』収録。レーベルとのメールのやりとりの行き違いで、不運にもアルバムからは収録漏れになったそう)
    5、世界中の人々が私を憎みはじめた
    6、私はなぜ知っているのですか?
    7、笑え、ユーモアに

     これまでのライブで感じた、「ゆるさもあり可愛らしいイ・ラン」は、どこにもありませんでした。荒々しく、ごつごつとしていて、ひとりの人間をむき出しにしたかのような、とてつもない演奏でした。

     彼女のギタープレイは、彼女の尊敬するアーティストであるアマチュア増幅器(ヤマガタトゥィークスター、ハンバッの弾き語り編成)のそれと同様、一定のストロークによるシンプルなスタイルが基本(一方、これまであまりなかった美しいアルペジオを披露する曲も)。そこに骨太のチェロが加わることで、楽曲の存在感がぐっと重くなっている印象を受けます。これまでの演奏に童謡の美しさを見るなら、さらに宗教音楽、祈りの深みさえ手に入れているよう。

     そして何より、彼女の声の表現力には驚かされました。天に届くようなカタルシスを感じさせる、そして若干の音のズレにも揺るがない、鮮やかで迫力ある高音の伸び。これまでの演奏にそのような歌い方はなく、そして正直、音源を聴いた時ですらここまで凄いとは思っていませんでした。映像や執筆の仕事をしつつ、ボーカルトレーニングに時間を費やしているようには思えないのに、どうやってこんな高音を手にしたのだろう。

     最後の『笑えユーモアに』では、叩きつけるようにギターを弾き、「笑え」と全力で歌いあげるイ・ラン。音源ではこの曲を(彼女が観覧したという、日本の有名お笑い番組の収録現場を想像しながら)ただユーモラスに聴いていた私は、自分は果たして他人からの評価を気にせず、何かを心から楽しく思い、笑ったことがあるのだろうかと、刃物を突き付けられたような気持ちになりました。

     彼女は『神様ごっこ』のエッセイに、全ての芸術は慰労であると書いています。ユーチューブで聴きやすい歌を聴いて一時良い気分になることも慰労といえますが、彼女の生々しい歌は、慰労という言葉のイメージからかけ離れた、より一層深く鋭い(ある時は苦痛を伴う)慰労を求めてきます。表現ということについて考えさせられた、圧巻のライブでした。

    雨乃日コンサート#41のお知らせ

    お知らせです。来る9月3日(土)、日本から女性シンガーソングライターのmmm(ミーマイモー)が来韓し、当店でライブをしてくれます。韓国からの対バンは、伝統と血を感じさせる熱い演奏が素晴らしいフェギドン・タンピョンソン。日韓の個性あふれるミュージシャンの共演は必見ですよ! 企画はヘリコプターレコーズとカーリーソルレコーズです(なお、日曜は近くの書店ユアマインドでmmmのソロライブがあります)。

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    amenohi concert #41 mmm (from Japan), フェギドン・タンピョンソン
    [mmm : ミーマイモー Live in Seoul]

    2016.9.3(sat) open 19:45/start 20:00
    charge: 前売 20,000won / 当日 20,000won
    info: http://smallshowsinseoul.blogspot.kr/2016/08/201693-94-mmm-live-in-seoul.html
    予約がおすすめです。予約サイトは上になりますが、韓国語が分からない方はメールください。

    あわせて営業日のご案内です。
    当店の定休日は火曜と第1・第3水曜日ですが、8月31日(水)も臨時休業いたします。また9月3日(土)はライブのため6時30分までの営業となります。



    続いて9月上旬のおもしろそうなイベントなど。

    8.27(土) 「Team New Generation of Ska」 韓国のスカバンドが集合するイベントのようです。日本からオイスカが出ますね。
    9.2(金) 「YOU ARE TROPICAL」 タイのYELLOW FANG、香港のGDJYBというバンドが来韓。韓国からはグナムグァヨライディングステラ、スルタンオブザディスコと実力派が登場します。

    雨乃日コンサート#40のお知らせ

    8月7日(日)、日本から3人のシンガーソングライター、松本敏将(Kufuki / tobbacojuice)さん、次松大助(The Miceteeth)さん、はせがわかおりさんが訪れ、当店で演奏してくれます。

    amenohi concert #40
    Matsumoto Toshimasa, Tsugimatsu Taisuke, Hasegawa Kaori
    [Peace Peace Peace Trip]

    2016.8.7(sun) open 18:45/start 19:00
    charge: 10,000won(当日券のみ)
    ※当日の飲食の営業時間は、13:00~16:30となっております。

    しっとりと心のこもった演奏が楽しめる、貴重なライブです。予約は不要ですので、韓国にいらっしゃる方はぜひお越しください。

    次松さんは、2010年11月の当店オープニングで演奏してくれた経緯があり、また松本さんは2013年、在籍する「くふき」が韓国ライブを行った際、当店でソロライブを披露してくれました。久しぶりの再会(そしてはせがわさんとの新しい出会い)が個人的にもとても楽しみです。なお、前日では空中キャンプでもライブを行うそうです。

    peacepeace.jpg



    あわせて、8月のおもしろそうなイベントを紹介します。

    - 2016.8.6(sat) seoul soldout(ソウル人気フェスティバル)
    ヘリコプターレコーズのパク・ダハムと、DJ/編集者のチョン・ウヨンが企画する、新しいロックフェス。名前からしてぶっ飛んでいて最高ですが、音楽そのものよりも騒ぐことを求めて人が集まる、近年の大型商業フェスの代案として、韓国発の素晴らしいアーティストばかりが集まります。グナムグァヨライディングステラ、タンピョンソン&セイラーズ、wedance、トランポリン、(リム・ジフン率いる)ファンカフリック、(めったにライブをしない)ソンキョルなど、海外での評価も高い(が今年の国内フェスにはほとんど登場しない)、いま熱いミュージシャンが確認できます。
    www.seoulsoldout.com
    予約サイト(英語)

    - 2016.8.20(sat) 21(sun) Aoba Ichiko & skip skip ben ben Live in Seoul
    日本の青葉市子、台湾のskip skip ben ben、そして韓国人ミュージシャンによるライブ。20日には、最新アルバムが好評な一方でライブはめったに行わないイ・ランが登場(なお彼女も台湾でskip skip ben benと共演)、予約必須の貴重なイベントになることでしょう。21日のアーティストは未発表のようですが、日韓台の気鋭のアーティストの共演は、私も今から楽しみです。近い国同士の文化交流がどんどん深まることを願います。
    www.facebook.com/events/1761120640831500

    あとソウルではないのですが、堤川市にて8月11日から5日間行われる「堤川国際音楽映画祭」も見逃せません。音楽と関係ある世界の最新映画が上映されるのですが、韓国ものではパンクバンドのドキュメンタリー『老後対策なし』が面白かったです(私は全州映画祭で観ました)。遠藤ミチロウのドキュメンタリーも上映されますね。
    http://jimff.org

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    2010年11月12日にオープンした、日本人が運営する弘大の喫茶店です。このブログでは、日本の皆様にソウルの状況をお伝えします。最新情報や臨時休業日は、韓国語サイトツイッターをご確認くださいませ。

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